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まるでどこも見ていないみたいだし、なんの感情も持っていないようにしか見えない。
幸子は名前を呼ばれたほうへとゆらゆらゆれながら歩いていく。
「逃げて!」
あたしは咄嗟に叫んでいた。
「理恵も同じ目をしてた!」
そう叫んだのは香だった。
気がついた生徒たちはいち早く教室から逃げ出して行く。
あたしもすぐに逃げ出したかったが、こわばった体がうまく動かない。
出口へと向かおうと足を動かすが、すぐに机にひっかけてこけてしまった。
しかし、痛みは感じない。
心臓は早鐘を打っていて目は幸子の動向をしっかりと見ている。
幸子は切り付けた友人の横を通り過ぎて、名前を呼んだ子へと近づいている。
「逃げて!!」
起き上がるより先に再び叫んだ。
今幸子の狙いはあの子1人だ。
他の子のことは視界に入っていないように見えた。
あたしの声に反応し、その子はビクリと体を震わせた後どうにか教室から駆け出していた。
安心したのもつかの間だった。
ターゲットがいなくなったのを見た幸子が、こちらへ視線を向けたのだ。
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