悲鳴

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「待って、純也が!」 純也はまだ動こうとしない。 真正面から幸子と対峙する格好になっている。 「幸子、目を覚ませ」 純也が落ち着いた口調で声をかける。 しかし、幸子には届かない。 純也の目の前で立ち止まった幸子が右手に握り締めたカッターナイフを振り上げる。 「逃げて純也!!」 叫んだ瞬間、カッターナイフが振り下ろされる。 純也! 咄嗟に視線をそらしたそのときだった。 「やめろ!」 と先生の声がして、幸子の体は簡単に組み伏せられていた。 来てくれたのは柔道部の顧問だったのだ。 筋肉質な先生に押さえつけられて、幸子は身動きが取れなくなっている。 その隙にカッターナフイフは取り上げられた。 慌てて純也に駆け寄る。 気がつかなかったけれど、純也の体は恐怖で小刻みに震えていた。 カッターナイフを取り上げられた幸子はどうにか逃げ出そうと抵抗をしているが、組み伏せられたままでうまくいかない。 でも、これでは先生も動けない状態だ。 どうにかして幸子を拘束しないと! 「なんでもいい、ロープか紐を持って来てくれ!」
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