悲鳴

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先生の声にハッと現実に引き戻された。 見ると幸子が教室後方のドアから逃げ出したのだ。 拘束に失敗したのだ! あたしはすぐに廊下へとかけ出た。 幸子が奥の教室へ入るのが見えた。 追いかけようとしたが、恐怖で足がすくんで動かない。 幸子はカッターナイフを取り上げられているとわかっていても、やっぱり追いかけることはできなかった。 「倉庫に逃げ込んで内側から鍵をかけられました!」 幸子を追いかけて言った男子が戻ってきて、先生にそう報告をした。 普段から倉庫として使われている一番奥の教室は、普通の教室の半分ほどの広さしかない。 その上も窓もなくて埃っぽいから、そんなに長時間立てこもることはできないはずだ。 「とにかく一旦教室へ戻れ! 他の先生方にも報告をしてくる!」 先生はそう言い、青ざめた顔で職員室へと向かったのだった。 ☆☆☆ あたしは自分の席に座り、呆然と黒板を見つめていた。 今日はまだ1度も使われていない黒板は綺麗なままだ。 「理恵も幸子も、どうしちゃったんだろうね」 隣の席の雪が呟く声が聞こえてきて、視線をそちらへ向けた。
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