57人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
雪は少し泣いたようで、目が赤くなっていた。
「わからない……」
あたしは力なく左右に首を振った。
幸子の灰色の目を思い出して強く身震いをする。
あの目に見つめられたとき、体中が凍り付いてしまったようだった。
恐怖で全く動けなかったし、純也がいなかったらあたしは今頃……。
そう考えて大きく息を吐き出した。
「あの目、悪意しかなかった。しかもそれを楽しんでいるようにも見えた」
あたしは灰色の目に感じたままを口にした。
雪が眉を寄せて「楽しむ?」と、聞き返してきた。
「うん。わからないけど、そんな気がしたんだよね」
だけど幸子自身が望んで動いているようには見えなかった。
まるで何者かに操られているような……。
そこまで考えて、ふいに噂話を思い出した。
昔この町で起こった殺人事件の話。
犯人は当時16歳で、16歳になる子に乗り移って殺人を再開する。
そんなこと、あるはずない!
あたしはすぐに左右に首を振って自分を考えをかき消した。
あんな噂を聞いたばかりだから、ついつっくけて考えてしまうんだ。
最初のコメントを投稿しよう!