悲鳴

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それに、あの噂は星のアザができると言っていた。 よく確認したわけじゃないけれど、2人にそんなものはなかったと思う。 複数人に現れるとも、噂の中じゃ聞いたことのない話だった。 それから先生がやってくるまで30分ほど待っただろうか。 緊急事態でバタバタしているのか、なかなか指示を出してくれる人が来なくて、みんなの疲弊感が強まっていった。 早く帰りたい。 その思いで窓辺へ視線を向ける。 窓の外に広がる風景はいつもどおりでなにも変化は見られなかった。 散歩をしている老人夫婦。 犬を連れている若い女性。 忙しく走っていくサラリーマン。 その人たちはこの学校内で起きている惨劇に気がついてもいない。 あたしも早く外の人たちと同じように日常に戻りたかった。 そう思っていただけなのに……。 「ああああああああー!!」 突然、窓辺の席の男子生徒が雄たけびを上げ始めたのだ。 ギョッとして目を見開く。 男子生徒は太(フトシ)君という名前で、柔道部員だった。 太君は雄たけびを上げながら勢いよく立ち上がり、頭上へ椅子を振り上げた。
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