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「止めなきゃ」
呟いたのは香だった。
「今外に出たら、あの子たちが……!」
そこまで言った次の瞬間、香は駆け出していた。
せっかく閉めていたドアを開けて廊下を走る。
「待って!」
あたしはすぐにその後を追いかけた。
廊下には襲われた生徒たちが血を流して倒れている。
中にはすでに息を引き取っている生徒もいるようだ。
他のクラスも混乱が渦巻いていて、あちこちから泣き声を怒号が聞こえてくる。
生徒たちの間を縫うようにして走る。
「香待って! 1人で行ったら危ないから!」
叫んでも、他の音にかき消されて香まで届かない。
「遥!」
後方からそんな声が聞こえてきてあたしは立ち止まった。
振り返ると純也と雪が追いかけてくる。
「遥、そのまま外まで逃げるんだ!」
言われて大きくうなづいた。
学校内にいるほうが捕まる危険が高いからだと、瞬時に判断した。
あたしは香を追いかけて再び足を動かした。
生徒の波にもまれ、何度も香の姿を見失いそうになる。
階段を踏み外しそうになり、ヒヤリとする。
それでも足は止めなかった。
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