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みんながバラバラになってしまえば、もう出会うこともできないかもしれない。
そんな恐怖心も強かった。
「雪」
静かな声でそう言ったのは香だった。
香は痛そうな表情を浮かべて雪に近づき、その肩に触れた。
「2人の言うこと、正しいと思うよ」
「香まで小村君を見捨てろって言うの!?」
雪は香の手を振り払って叫ぶ。
「仕方ないでしょ!? 感染してない生徒全員を助けるつもり!?」
香の言葉に雪は一瞬言葉に詰まった。
雪が小村君だけを助けたいことは、みんなが理解していた。
小村君以外の全員を見捨てる覚悟はすでにできているということを、雪に認識させたのだ。
「だって……」
雪は唇を歪め、その場にずるずるとへたり込んでしまった。
香がその体を支える。
廊下では小村君の悲鳴が聞こえてきて、それはやがて遠ざかり、そして消えていってしまった。
「悲しいと思うけど、でも今は自分の命が一番大切なんだよ」
香の言葉に雪が肩を震わせて泣き始めた。
「うぅ……っあああああああああ!」
悔しさや悲しさを我慢するために精一杯の悲鳴を上げる。
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