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香は雪の体を強く抱きしめた。
あまり大きな声を出していると、ここにあたしたちがいることがバレてしまう。
あたしは緊張で喉がカラカラに乾いていくのを感じていた。
廊下の様子を気にしながらも、雪が早く混乱から覚めるのを願うばかりだ。
「遥、大丈夫か?」
いつの間にか純也が隣に来ていて、声をかけてきた。
あたしは小さくうなづく。
もし廊下にいたのが小村君じゃなくて純也だとしたら?
そう考えて胸が張り裂けそうになる。
助けることを引止められた雪はなにを思っただろう。
あたしは思わず純也の手を強く握り締めた。
今ここにいるのが純也で本当に良かった。
「雪、大丈夫だから落ち着いて?」
雪の悲鳴はまだ鳴り止まず、香が焦り始めている。
あたしは慌てて雪に駆け寄った。
「雪、ごめんね。でもああするしかなかったの」
あたしはそう言って雪の背中をさすった。
しかし、雪は身をよじってそれを阻止する。
「うるさい! あんたなんかに言われたくない!」
悲鳴を上げ、ボロボロと涙をこぼす目に睨まれる。
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