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純也はそう言ったきり、もうなにも言わなかったのだった。
☆☆☆
純也があたしから身を離したとき、すべては終わっていた。
隙間から見える彼女は血まみれで、もう人間の姿すらしていなかった。
あたしは大きく息を吐き出す。
膝から崩れ落ちてしまいそうになるのをどうにか我慢した。
「これでよかったんだよね?」
聞くと、純也はうなづいた。
「こうするしかなかったんだよ」
「あたしたち、いつまでここにいるの?」
「それは……」
純也が困ったような声になって、黙り込んだ。
薄闇の中でもどんな表情をしているのか理解できた。
そのくらい、あたしたちは長く一緒にいたから。
「ごめん。変なこと聞いちゃったね」
逃げることができるならとっくに逃げ出している。
「もしあたしにアザができたら、その時は遠慮なく殺してね」
「なに言い出すんだよ」
「だって、いつ誰に感染するかわからないんだよね?」
しかも、人数は倍になっていくのだ。
自分や純也が感染しないなんて言い切ることはできない。
「それでも、俺には遥を殺すことはできない」
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