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「教室に逃げ込んだの。物陰に隠れてたらあいつらあたしを見つけることができなかったんだよ」
その言葉にあたしと純也は目を見交わせた。
あたしたちもロッカーに隠れているだけで逃げ切ることができた。
あの考えは間違いじゃなかったみたいだ。
「でもさ、友達が殺人鬼になって、誰かを殺すのを見ちゃったんだよね」
皐月ちゃんはそう言ってギュッと目を閉じた。
その時の光景を思い出すまいとしているように見える。
「人を殺しているときの友達がさ……すごく、楽しそうだった」
皐月ちゃんの言葉の重みがズシリと胸にのしかかってくる。
相手は快楽殺人犯。
たしか、純也の両親はそう言っていたと言う。
笑いながら人を殺すなんて人間の心を持っているとは思えなかった。
「あたしたちと遊んでるときにだって見せたことのない笑顔だった」
皐月ちゃんはそう言うとうずくまるようにして両手で自分の頭を抱えた。
「皐月ちゃん大丈夫?」
そっと背中をなでると、体はひどく震えていた。
友人の豹変ぶりを思い出したのか涙がこぼれだしている。
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