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それでもみんなとはぐれてからずっと1人で逃げ切ってきたのだから、すごいことだった。
「ここで少し落ち着くのを待ったらいい。それからまたどうするか考えよう」
純也がドアから離れて言った。
廊下にはひとまず人の気配がないみたいだ。
「そうだよ。あたしたちも一緒にいるし、きっと大丈夫」
すべての言葉を言い終わる前に、皐月ちゃんが顔を上げていた。
あたしは安心させるためにニコリと微笑む。
ここにいればしばらくは安全だよと言葉を続けようとしたとき、あたしは口を開けたまま動きを止めた。
「皐月ちゃん……」
さっきまで涙を浮かべていた皐月ちゃんの目からスッと涙がひいていくのを見たのだ。
同時に黒目がにごっていく。
「ちょっと……」
あたしは咄嗟に立ち上がり、皐月ちゃんから離れていた。
皐月ちゃんのショートカットの髪から覗く右耳に、星型のアザが浮かんでくるのを見た。
「ひぃ!」
悲鳴を上げて後ずさる。
「どうした?」
「あ、あれ!」
皐月ちゃんの耳を指差したとき、皐月ちゃんの目が完全に灰色に変わっていた。
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