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遠くから聞こえてくる悲鳴。
パトカーのサイレンや消防車の音も聞こえてくる。
その音に胸の奥が黒いモヤに包まれていくような感覚がした。
「ねぇ、外へ出た生徒たちはどうなっちゃったのかな?」
「遥。今は自分のことだけ考えよう」
横から純也の手が伸びてきて、窓は強制的に閉められてしまった。
だけど目の前に広がっている現実は変わらない。
外でも何人、何十人の人が死んでいる。
そして感染拡大も続いているということ。
スマホで時間を確認してみると、いつの間にか夕方近くなっていた。
これだけ時間が経過しているということは、殺人鬼の数は……。
想像するのも恐ろしい。
次に殺されるのは自分じゃないか。
次にアザが出現するのは自分じゃないか。
そんな不安が急速に膨らんでいって、あたしは前を歩く純也の手を掴んだ。
「どうした?」
立ち止まり、振り向いて心配そうな顔を向けてくれる。
それはいつもの純也で少しだけ安心することができた。
どれだけ世界が変わっても、純也だけは変わっていない。
それだけで心が落ち着いていく。
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