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あたしももう普通の精神状態じゃなくなっているのかもしれない。
なにが普通でなにが正義なのかもわからなくなった空間で、あたしと純也の存在だけがリアルに感じられた。
「遥……」
少し寝ぼけた声が聞こえてきてあたしは純也を見下ろした。
「おはよう純也」
「俺、寝てたのか」
「あたしも寝てたから大丈夫だよ」
そのくらい2人とも疲れ果てていた。
「外の様子はどうだろうな」
そういって純也が立ち上がったので、あたしは後ろから抱きついた。
純也の暖かさを感じて目を閉じる。
「どうした?」
「もう少し、このままでいたい」
こんな言葉今まで使ったことがなかった。
きっとこれから先も恥ずかしくて使うことはないと思う。
純也は一瞬戸惑ったようにみじろぎをしたが、すぐに体の向きを変えて抱きしめてくれた。
このぬくもりを感じていられる間はあたしは大丈夫だ。
純也の鼓動もしっかりと聞こえてくる。
そして自分の鼓動も聞こえてきた。
純也の手があたしの頭を優しくなでた。心地よさに思わず目を閉じる。
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