妹さん

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「家の中から出られないように、そこだけ隔離した部屋ね。食べ物や飲み物はそこに運んで、トイレは床の一部を切り取って作っていたの。当時はどこの家も穴を掘っただけのトイレだったから、それを室内も作った感じね」 「それってまるで……」 牢屋だ。 言いかけて言葉が喉の途中で止まった。 文隆の妹である森安さんにその言葉を言うのがためらわれたのだ。 しかし、森安さんはうなづいた。 「そう。牢屋みたいでしょう? 当時はそういう場所のある家があって、精神疾患などにかかった家族を隔離したりしていたのよ」 「そんな……」 そんなのまるで人権侵害だ。 そんな場所に隔離されたら、余計に精神がおかしくなるかもしれない。 でも、当時ではそれは珍しいことではなかったようだ。 「兄はあまり学校にも行かなかった。時々登校しても周りからアザのことで忌み嫌われてイジメを受けるのが関の山だから。それでも、高校にあがってからはできるだけ学校へ行くようになったの。兄は勉強が良くできたし好きだとも言っていたから。それに、友達と呼べる人も一応はできた」
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