好きなこと

3/12

31人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
そして陰性だとわかると入院させられ、ちゃんとした手当てを受け、隣街の様子を説明させられた。 そして今、この施設で世話になっている。 「学校……ですか」 俺はボソリと呟いた。 先生はゆっくりと、穏やかな表情でうなづく。 隣町はいまだに感染が続き、壊滅的な状況になっているらしい。 ニュースでは連日隣町のことが放送されていて、ついには街が封鎖されたと伝えられた。 学校や家に戻るどころか、俺は隣町に入ることすら許されなくなってしまったのだ。 「そう。純也君はまだ16歳だから、好きな道を選べると思うの」 先生の言葉に俺の心が揺らいだ。 俺の好きな道。 そう言われて思い浮かぶのは彼女だった遥との楽しい毎日だ。 遥と、他の友達と平和な日常を過ごすことだ。 だけどそれはもう戻ってこない。 俺が二度と手にすることのできない未来だ。 「考えておきます」 俺は小さな声でそう言うと、先生に小さくお辞儀をしてベンチから立ち上がったのだった。 ☆☆☆ 俺が今一番したいことはなにか? 2段ベッドの上で眠れないまま考えた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加