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でも、女である私が間に入れば文隆は更にイジメられることがわかっていた。
だから私はこっそり先生に知らせることしかできないのだ。
その先生だってあてにならない。
アザがあり、女子生徒のように華奢な文隆を守ろうとしたところを1度も見たことはなかった。
どうして文隆がこんな目にあわないといけないのか、私には到底理解ができなかった。
そして、その時間がやってきたのだ。
休憩時間中の文隆はずっと耐えていた。
クラスメートに何を言われても言い返すこともなく、我慢を続けていた。
そんな我慢や、今までの気持ちがすべて爆発するように授業中に勢いよく席を立ったのだ。
黒板に向かっていた先生が椅子の音に気がついて振り向く。
そして棒立ちになっている文隆を見て顔をしかめた。
「なにしてる。座りなさい」
注意をした次の瞬間、教卓近くの席だった文隆は先生の腹部を深く深くナイフで突き刺していた。
席が近い私はすぐのその事態に気がつき、呆然として文隆を見つめた。
その時の文隆の顔は今でも忘れられない。
あれだけ楽しそうに笑う顔、初めてみたからだ。
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