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わかっているのに、右肩の痛みが俺の動きを邪魔していた。
少し動いただけでズキズキとうづくような痛みが走り、背中へむけて生暖かい血が流れていくのを感じる。
どれだけ深く切られたんだろうか。
肩と言っても油断していたら出血多量で死んでしまうかもしれない。
できるだけ出血を抑えて逃げないといけない!
桃田さんの脇をすり抜けて駆け出そうとしたが、その瞬間にナイフの絵で背中を殴られた。
「ぐっ!」
低い悲鳴を漏らしてその場に転がる。
「あぁ、間違えちゃった」
地面に転がる俺を見下ろして桃田さんは愉快そうに言う。
「ナイフはこっち側を使わなきゃね?」
そしてナイフをしっかりと持ち直した。
刃先を俺に向け、体の上にまたがってくる。
「ふ、文隆さんの前でこんなことをしていいんですか!?」
こんなことを言っても動揺なんで見せないかもしれない。
しかし、桃田さんは視線を一瞬お墓へと向けたのだ。
「文隆さんに人殺しだって思われますよ?」
更に言葉をぶつけたそのときだった。
突然桃田さんは大きな声で笑い始めたのだ。
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