お墓

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その声は森の木々にこだまして戻ってくる。 俺は目を見開いて桃田さんを見つめた。 「ごめんなさいねぇ? このお墓、誰のだか知らないのよ」 ひとしきり笑った後、桃田さんはそう言ったのだ。 俺は目を見開いて「どういうことだ?」と、聞き返す。 「そのままの意味よ。ここは文隆のお墓じゃないってこと」 嘘だろ……? 絶望が全身に襲い掛かってきている気分だった。 ここは文隆の墓じゃない? じゃあ俺が今までしてきたことはなんだ? 全部、踊らされていたって事か……? 「悪く思わないでね? これも文隆のためなんだから」 桃田さんがナイフを振り上げる。 俺は脱力してしまって桃田さんを突き飛ばす気力も残っていなかった。 俺はなにをしていたんだ。 文隆の気持ちを沈めるために動いていたんじゃなかったのか。 それなのに、こんな簡単に騙されるなんて……! ナイフが俺の眼前まで迫っていた。 もう、終わりだ。 ☆☆☆ バンッ! と耳を劈くような、爆竹のような音が聞こえてきたと同時に桃田さんの体が動きを止めていた。
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