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森安さんは真剣な表情で俺を見つめて「まだ、やることがあるんじゃないの?」と、聞いてきた。
「え?」
聞き返すと、森安さんはパンパンにおもちゃが入った買い物袋を俺に差し出してきたのだ。
「あっ」
「お願い佐々野君。私は文隆を助けたいの」
森安さんはそう言って俺に頭を下げてきたのだ。
本当に文隆のことを考えているのはこの人だった。
俺は大きくうなづいた。
もちろんだ。
それが、俺の本来の目的なんだから。
「文隆さんの、本当のお墓に連れて行ってください」
俺は森安さんにそう頼んだのだった。
☆☆☆
文隆のお墓は見晴らしのいい高台にあった。
そこはお寺が管理している場所らしく、綺麗に掃除されている。
桃田さんに連れられていった無縁墓とは大違いだった。
「ここよ」
森安さんに連れてこられた墓もまた綺麗で、新しい花が添えられていた。
墓石にはちゃんと本人の名前が刻まれている。
「実は私も昨日きたところだったの。あの家の掃除をするついでに」
そう言うと、森安さんは持ってきた線香に火をつけてそえると、手を合わせた。
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