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「お前はいくらでも自由にできるんだ。恨みに縛られる必要もない」
言いながら、それは自分も同じだと感じた。
これですべてが終われば俺は自由になれる。
悲しみや苦しみが消えることはないだろう。
それでも、前をむくことができる気がする。
その時、暖かな風が俺と森安さんの間に吹き抜けて行ったのだった。
☆☆☆
「お前急にいなくなるんだもん。ほーんと、どうしようかと思った!」
施設に戻った俺は先生たちからこっぴどく叱られ、部屋に戻ると大谷から大げさなため息をつかれていた。
「本当に悪かった」
俺は紳士に頭を下げた。
大谷には特に世話になったから、本当に感謝している。
「で、結局なにか解決はしたのか?」
そう聞かれて俺は曖昧にうなづく。
「とりあえず、今の俺にできることはしてきた」
「そっか。それならいいんじゃねぇの?」
大谷はニカッと白い歯を除かせて笑う。
「やれることやったなら、後は待つだけだなぁ」
大谷は詳細を聞くようなこともなく、そのままゴロンとたたみの上に横になった。
そしてスマホゲームをはじめる。
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