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正田兄妹は、いそいそと二階の書斎へとやってきた。
「念のために聞くが、レオナルドはこれを隠した後にどこば行った?」
もはやダビンチではなく、レオナルドが父を指す暗号と化していた。
「お母さんと一緒に『畑ば行く』っち言うとらした」
「……レオナルド夫妻が勤勉な農家で良かった」
父は先祖代々残された土地を耕して生きる農家で健やかに育ち、母・楓子も出産以外で入院したことない健康な人だった。
その二人が畑に行ったとなると、数時間は戻らない。
「よしっ!」
安心して兄が、書斎の押し入れの段に足をかける。そこまで行くと、目の前には、ロフトへと続く天井の板。
DIY趣味の父が、そこにご丁寧に電灯までつけているのを知っている。
押入れの脇に隠れたように存在するスイッチをONにすると、柱と断熱材がむき出しになった屋根裏の暗闇にLEDが灯った。
(あれだな)
すぐに見つけた。
【秘密】【封印】【開けたら呪う】と書かれた有難みのかけらもないメモ用紙が、べたべたとセロテープで高級五三焼きカステラの木箱に貼られている。セロテープが風化して黄色くパリパリになっている所を見ると、なかなかに古そうな箱だと思われた。
興味半分で兄は箱の蓋を開けてみた。
彩子の言う通り、カセットテープがごちゃごちゃと放り込まれている。
(これは0503……。で、こっちは1103か)
ラベルには、どれにも4桁の数字が書かれている。
(何の暗号やろ?)
彩子の言うように聞き覚えがあるような、ないような。
木箱の隣には、カセットデッキもあった。
(まあ、いい。目的はこっち……と!)
30㎝程度の横長のカセットデッキの取っ手を掴むと、兄は素早く押し入れから飛び降りた。
「よし、ゲットした。おいん部屋ば行って聴いてみよう」
「よかんば!」
書斎に入った形跡が残ってないか、二人は入念にチェックした後、誰に咎められるわけもないのに忍び足で兄の部屋へと移動した。
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