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本音だけの5分間です。
《どういう意味?》
《もう此処からは、お前のボケには付き合わないって事》
《は?》
誰がいつボケをかましたんだと反論したら「エレベーターに閉じ込められてるのも新手のボケだろ?」と返ってきて、今度は私が飛び蹴りをしているウサギのスタンプを送りつけることになった。
自然と顔を歪ませつつ重ねて否定をすれば、再びスマホがぽこっと間抜けに鳴る。
《いや、お前割といつも、笑えないボケ方してる》
《はあ?いつの話よ》
《ちゃんと報告する前に、俺の進路情報をどっかから勝手に仕入れてきたりするのも、笑えないボケですけど?》
『花江先輩、□大の推薦決まったんだって!』
後輩達が噂しているのを、立ち聞きしてしまった。
バレー部のこの男の部活姿を見学しに行く女子の数は、キャプテンになると更に増えて、増加の一途を辿り続けた。私は放課後の練習をうっとり見つめる集団の中には勿論入られる筈もなくて、公式戦とか同じ高校の生徒として応援しても不自然じゃ無い時しか、男のプレーを観ることは出来なかったけど。
ずっと続けてるそれを、凄く好きなことくらいは、知っている。
□大は部活にとても力を入れていて、バレー部も強豪校だと、こっそりスマホで調べたら検索一覧の上の方に沢山情報が出ていた。
スポーツ推薦では無く、学力と成績で推薦を勝ち取ったことで、この男の株はより一層高値を更新し続けていた。
《そんで、「聞いたよ、おめでと」とか、俺に軽く言ってくる》
じゃあどうしろって言うの。
強がって、そう言うしかないじゃん。
「ちゃんと報告して」なんて我儘、言っても良かったの?
当然スマホには打ち込めない問い掛けがぐるぐると頭の中を駆け巡って、また私の指を止める。
《俺は、直接言いたかった》
まるで直ぐ側に居て、私の考えを読み取れるように。
男が投げてきた言葉を読んだ途端、再び視界が滲んでいく。鼻の奥がツンとする独特の痛みもさっきからずっと続いていて、もはや麻痺してきた。
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