本音だけの5分間です。

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《じゃあもっと、早く言ってよ》 《受験結果出てからじゃないと、落ちてたら恥ずいだろうが》 《なにそれ。変なプライド捨てろ》 《お前もな》 "お前もな" その通り過ぎる意見に、本当に、ぐうの音が出ない。返事を返せずに項垂れていると、追うようにメッセージがまた届く。 《俺は、お前の進路を恵美(えみ)さんから聞いた。試験は英語の比重が高いから、ずっと単語帳持ってるって言ってた》 恵美とは、私の母親のことだ。この男のことを自分の息子のように大層可愛がっているせいで、花江家には異常な程に口が軽い。 《景衣》 《なに》 《俺らはこれからも、自分達の大事なことを全部人づてに聞いて、気にしてないフリすんの?》 もうとっくに涙腺は壊れきってしまっていた。ぐずぐずの酷い顔も声も何も晒さなくて済んだから、此処に閉じ込められてて良かったかもなんて、歪な考えまで浮かんだ。 永遠に溢れ出しては流れる涙を必死に拭う。 ――嫌だよ。  "大学でも、バレーは勿論続けるんでしょ?"  "新しい部屋は、どんなとこ?"  "バイトとかも、何か、考えてるの?" そういう、「これから」のことを私はずっとこの男から聞きたかった。 《良いことも悪いことも、ぜんぶ一芭から聞きたい。離れても、ちゃんと教えてよ》 震える手で言葉を打ち込む。1つ浅く息継ぎをして、意を決して送信ボタンを押し込むと、さっきまで勢いよく交わされるメッセージに合わせて鳴り続けていた通知音が、ぴたりと止んでしまった。 「……え、なに」 違和感を感じて画面を見つめると、今しがたボタンを押して届けた筈の私の勇気は【送信に失敗しました】との報告を受け、あの男の元へ到着していないらしいと分かった。 先程までこの密室でも順調だった筈の電波が息絶えて、"圏外"表示になっている。 「こ、このタイミングで……!!」 私は、どれだけ間が悪いの。
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