本音だけの5分間です。

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「大丈夫ですか!!」 気合を入れた筈が肩透かしを食らって、座り込んだまま肩を落とす私に、突如、安否確認の声が頭上に降る。鈍い機械音と共にドアがゆっくりとこじ開けられ、ずっと閉鎖されていた密室空間から解放された。 その瞬間を待ちわびたように電波を取り入れてポコポコと音を立てながら私のスマホに再び届き始めるメッセージ。嗚呼、向こうからのものも届いてなかったのかと、それを確認した時。 「……っ、」 お怪我無いですかとエレベーター内に入ってくる業者の人達に「ありがとうございました!元気です!」とお礼を早口で告げて、すり抜けるように外へ飛び出した。 見慣れすぎた景色は、なんと30分前の1階のまま。 エレベーターで全く上の階に上がれていなかったのだと気づいた私は、そのまま外階段に繋がるドアを目指して走り出した。「本当に大丈夫ですか!?」と業者のお兄さん達が驚いたように問いかけてくれていたのを背中で聞いて返事だけは大きく返しながら、足は止められそうに無い。   『けいって名前、男みたいじゃない?』 『そう?』 『うん。ひとは は、名字も名前もかわいいから、良いね』 『それ、べつに嬉しくねーけど。……あー、じゃあさ、』 昔、1つだけ交わした "それなりにオオゴトな約束"を、 あの男は覚えていたりするのだろうか。 《え、何、此処で既読無視とかあり?でももう良いわ、全部言っとくわ》 ――『いつか「はなえ」になればいーじゃん。"花"とか、ちょっとは、かわいくなるだろ』―― 《俺はお前に「花」をやるって、昔、約束したと思うけど。》
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