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後輩たちの、厄介な見解
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「うぐっ…一芭ぜん"ばい"、今まで…っ」
「あ、ありがどう"、ござい"まじた…!」
目の前の、一般的な平均身長より随分と背の高い男達がみんな堪えるようにぐしぐしと涙を拭いつつ、ほぼ聞き取れない鼻声で俺に何かを伝えてきている。
「……いや何言ってんのか、よく聞こえないけど」
「あーーー照れてる!!!照れてるから誤魔化してる!!でも、そういう先輩の照れも、見納めなんですねえ…っ」
めちゃくちゃうるさいな。
いつものように練習を終えて、シューズケースを手に体育館から出ようとした時だった。何人かの後輩が連なって焦ったように俺を引き止めてくるのに気づいた時には、あっという間に取り囲まれていた。何が始まるのかと呆気に取られていると、現キャプテンの「整列!」という掛け声と共に、そこにいる全員がぴしっと姿勢を正す。
――そこまでは、良かったのだが。
キャプテンが俺を呼ぶ「一芭先輩!!」の声から既に上ずって震えきっていて、それを聞いた後ろのメンバー達もみんな急に表情が崩れていく。なんなんだと見ていると勢いよく泣き出した彼らがボロボロの涙声で俺にお礼を告げた。
「……泣きすぎだろ。暑苦しいし怖いわ」
「そんな"ごど言って、嬉じい"んでしょ…!」
「最後くらい、素直になれよ花江 一芭め!!」
こいつらは、本当に俺の後輩なのだろうか。
とてもなめられている気がするけど、目の前の奴らの瞳から流れていく涙は確かなもので、それをじっと見ていると思わず笑いの混ざった溜息が溢れた。
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