後輩たちの、厄介な見解

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「引退してからも今まで親しんできた此処で、身体が鈍らないようにバレーを続けられるのは、助かった。歳上がいつまでも居て申し訳なかったけど、感謝してる」 吐き出した全てが本心だった。 感謝を告げるのは、間違いなくこいつらではなく、俺の方だ。先輩が漸く引退して伸び伸びできる筈の空間に水を差す形だった。 「3月までの辛抱ですから」なんて口を揃えて言うくせに、いつ顔を出してもちゃんと迎えてくれる。大学へ進学するまで、バレーに向き合える環境があり続けたことは、何より有難かった。 「……いいんでずよぉ…!!途中から一芭先輩のこと先輩だと思ってませんでした!」 「そうですよ!!だがら"、ごれがらも思いませんので、いつでも、来でくだざい…」 先輩だとは思えよ。 発言の至る所に突っ込みどころを見つけてしまうが、それでも練習着の袖で涙を拭き続けている彼らは気付いていないらしい。 「先輩、明日出発ですよね」 「そう」 春休みも半ばを過ぎた。母親がせっついてくることもあって随分と早くから決めた部屋への入居日は、明日に迫っている。 「じゃあ今日は、思う存分、彼女さんとラブラブしてくださいね…!!」 「……」 「まじで新渡戸(にとべ)先輩、美しいっすよね」 「一芭先輩、クソ羨ましい」 「……」 好き勝手に見解を述べる奴らに、もう此処からは聞かなくて良いだろうと判断して今度こそ背中を向けようとするが「あ、また照れてる」と言われ、睨みを利かせた。
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