後輩たちの、厄介な見解

3/4

1538人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
当たり前だが別に、俺が好き好んでこいつらに"あの女"とのことを伝えたわけでは決して無い。 自由登校の俺達3年は、3学期に入ると、登下校の時間も各々の入試スケジュールに合わせて当然バラバラになった。 俺が学校へ行く理由は勿論この体育館に来る以外はもはや無かったが、あいつは第一志望の受験が終わった後も、変わらず自習室に通う日々を送っていた。 『ちょっと休めば』 『……結果分かんないし、もしダメだったら願書出してる国公立も受けないといけないし、そんな暇ない』 たまたまマンションを出るタイミングが重なって、2人して高校へ向かう途中、女の表情には不安がありありと映っていた。 ――本命の大学入試の日、景衣はまさかの熱を出した。 「まじでなんでそんなハプニングに見舞われんの」と突っ込みながらも、とにかくこの女を会場に連れて行くしかない。 その一心でいつもより熱い腕を引いて電車に乗り込んだあの日、試験を終えた女は「もう、全部、とりあえず埋めてきた」と迎えに行った俺に眉を下げて笑っていて、その場で抱き寄せそうになったのは、ぐっと堪えた。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1538人が本棚に入れています
本棚に追加