後輩たちの、厄介な見解

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「絶対に合格してる」と、簡単に言うことは俺には出来ない。単語帳をボロボロにしながら勉強に明け暮れていた姿を見ているからこそ、俺には無責任にそんな風には、伝えられない。 『…景衣』 『なに?』 『今日の夜、電話してきて』 『……な、なんで?』 突然の提案に、きょとんと目を丸くして見上げてくる女は空気の冷たさを敏感に感じ取っているのか、す、と真っ直ぐに伸びた鼻の先が赤い。 『取り留めのないことをグダグダ勝手に話したい気分だから』 『なに、それ』 『かけた後はお前、勝手に寝ていーよ』 『……一芭。私が今日、寝れないって思ってる?』 隣を歩いていた女の歩みが突然止まる。そして俺に尋ねてきた声が不安げに揺れていた。 ――明日は、景衣の第一志望の合格発表の日だ。 緊張でどうしても強張る顔を今でさえ隠せないこいつが、試験の前日同様に寝付きが悪くなるのは想像するに難くない。 『…別に?俺がラジオやりたいだけ』 『……』 最近漸く"彼女"になったこの女は、そういう不安をなかなか自分から素直に吐き出さない。 遠慮させないようにやや強引な話の導き方になったが、まあ良いかと景衣の頭を軽く撫でつける。 『…一芭』 『なに』 『…漫画のネタバレは、やめてよね』 早速文句かよと突っ込もうとしたのに、言葉と裏腹に花が咲くように安堵を混ぜた無防備な笑みを真っ向から、受け止めてしまった。 …こいつ、襲われたいんか。 触り心地の良い猫っ毛をそのまま強めに乱すと、予想通り睨んでくる景衣に笑いながら、自分の衝動的な荒い欲は、適当に誤魔化した。 ――その一部始終を後輩達に見られていて、部活の時に質問攻めにあうという拷問が待っているとは、想像していなかった。
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