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『……、も、もう終わり、』
『なんで』
『覚えた単語が、飛ぶ!』
『お前、どういう体の仕組みしてんだよ』
こいつは未だそんなことを言ってんのか。
何度か重ねた後、そう告げて俺の口を手で塞いで後ろに下がろうとする景衣を負けじと引き寄せようとした瞬間、側に放り出されたスマホが短く鳴った。
何かを察したようにお互い目を見合わせてから、景衣がスマホを手にする。直ぐ側で向き合ってしゃがむ俺にも見えやすい角度で、アプリのトーク画面を開くと、恵美さんから写真が送られてきていた。
6桁の番号が羅列されている写真の、真ん中。
先程、散々2人して口にしたから受験票を確認しなくても番号はもう覚えている。
【 014158 】
『……うかってる、?』
『…ん』
本当、絶対こいつには言わないけど、自分の受験発表の100倍は緊張した。もう2度とごめんだこんなの。寒さで白く舞う息に、安堵を大量に隠して吐き出す。
サイトを確認できたらしい恵美さんからの写メを見つめて、それから俺に震える声で確認してくる景衣に微笑むと、折角さっき拭ってやったのに、涙を再び溢す。
『、良かった…、絶対、此処で決めたかった』
『うん、おめでと。第一志望、すげーじゃん』
『…うん。それも勿論あるけど、それだけじゃない』
『?』
『国公立の試験、合否含めて春休みまでかかる。そしたら一芭と居られる時間、もっと減ると思って、』
ぽたぽたと流れる涙で外階段のコンクリートに染みをつくりながら、また真っ直ぐ伝えられたことには完全に油断していた。
頭で自制する前に掻き抱くように引き寄せて、抵抗されるより早くまた唇を奪う。
「受かったんだから単語くらい何個か飛ばして」とキスの合間に自分勝手に伝えると、ふわりと笑った景衣は、ぎこちなく背中に手を回した。
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