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要望は、ゲンコツ一発
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「いやあ、先輩なんで彼女作らないんだろってずっと思ってたら、まさかあんな幼馴染を隠していたとは」
「隠してねえよ」
「△大にも合格されてて、才色兼備じゃないすか」
「同じマンションで育ってきたとか、まじで漫画ですか!?」
「……」
もう、帰って良いだろうか。
先程の練習直後のそこそこ感動的なムードは完全に取っ払われてしまった。景衣と通学している所をこいつらに見られ、隠していた訳でもないので、彼女だと認めた。こんなに凄まじく騒がしくて煩いことは、あまり覚悟しておらず、大いに後悔している。
「やっぱり小さい頃からずっと一緒だと、"こいつのこと守ってやんなきゃ"みたいなの、生まれますよね!?」
『なんで1人で、行くの?』
好き勝手に再び俺とあの女の関係性を想像し始めた後輩達の発言に思わず、昔、受けた言葉を思い出す。
「そんな絵に描いたような関係じゃない」
「またまたぁ!」
「一芭先輩、ほんっと照れ屋さん」
うざい。
もはや何を言っても俺にとってしんどい反応しか返ってこない最悪のループに陥っていると気付いて、溜息を漏らす。
それに俺は、何も嘘は言ってない。
――昔からあの女は、
黙って守らせてくれた試しが無い。
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