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『ごめんね由紀子ちゃん、突然。一芭君もこんばんは』
『どうしたの、恵美ちゃん!』
『…あのね、さっき管理人さんから連絡があってね』
『え!?』
その晩、突然、景衣の母親が俺の家のインターフォンを鳴らした。俺は母親にも事情を話して、無事にゲンコツを食らい、改めて管理人のところへも謝罪を終えた後だった。修理代は要らないと言われたが、父さんとも、もう一度相談することになっている。
『"娘さんと、花江さんの息子さんが仲良く遊んでるのをよくお見かけします。ただ今日は、一芭君が駐車場で遊んでたと知って、それはキツく注意しました。頑なに1人だったと彼は言ってたんですが、念のため注意喚起を含めてお伝えしておきます"って。
…一芭君。景衣もその場に本当は居たんでしょう?』
あのスキンヘッド、余計なことを喋ってくれたらしい。図星を突かれて言葉に詰まると、景衣の母親は優しく瞳を細める。
『……由紀子ちゃん、詳しく話聞かせてくれる?うちにも当然責任あるんだから』
『恵美ちゃんごめんね…でも大体、このバカ息子の所為だから……』
申し訳なさそうにそのバカ息子を育てた俺の母親が、恵美さんを部屋へと招く途中、彼女は再び俺へと視線を向ける。
『一芭君、景衣と遊んでてくれる?いつもの、踊り場に居るから』
『…分かった』
『……景衣を庇ってくれてありがとうね』
『……』
『でもね、一芭君。うちのバカ娘は、いつも一芭君の隣に居たいのよ』
優しく俺の髪を撫でて恵美さんが伝えてくれたことは、その場では、よく分からないままだった。
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