この場所は独りより、ふたり

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 この場所は独りより、ふたり

____________ _____ いつも通り高校での練習を終えて、後輩達からの尋問を終えた後。夜は俺の家で、景衣の家族も招いて盛大に送別会のようなものが催された。 この歳で大袈裟にやめてくれと何度伝えても、母親の由紀子や恵美さんが頑なに強行した。むしろあの2人が酒を飲むために集まりたかっただけな気もする。 そこそこ夜も深くなった頃、景衣は「明日私も早いから、お母さん置いて先に戻る」と立ち上がった。 春休みに入って、チェーンのカフェでバイトを始めた女は、時給の高い朝早くシフトに入ることも多いらしい。 「……だから、明日、見送りは出来ないけど」 「要らん、これ以上仰々しくされたら疲れる」 「…たしかに」 玄関先で振り返った景衣に、溜息混じりに伝えると今日の盛大すぎるパーティーを振り返っているのか表情がほぐれる。 「寝坊しないようにね」 「お前みたいに寝つき悪くないから」 「うっさいな」 あまりにいつも通り過ぎる会話に、何処かでほっと安堵する。 お互いの受験が終わってから、そこそこ2人で出掛けたし、限られた時間はちゃんと無駄にせず上手く過ごせていたと思う。 「……じゃあね。明日、無事に着いたら連絡してよ」 「その台詞、由紀子にも恵美さんにも言われてるけど」 「煩いな、3人にちゃんと個々で連絡するんだよ」 一回に纏めさせろよ。 そう言って思わず笑うと、やっぱり景衣もちゃんと微笑む。 「おやすみ」と玄関を出て行くまで、俺らにしてはあまりに"素直な"、別れ方だった。
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