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「一芭、寂しい、」
「…うん」
「ごめん、笑って、新しい門出をちゃんと見送れる彼女になりなかったけど、やっぱり無理だ」
「諦めろ。よく考えたら、俺らにそんな清々しいキラキラした感じ、キモいだろ」
「あんた、なんて言い方すんの」
信じられない、と目を三角にしながら顔を上げた景衣の唇に噛み付く。
不意をつかれて悔しさを滲ませる女に笑って、瞼や頬にもキスを落とすと、擽ったそうに少し身を捩って、それからまた涙を溢す。
そのまま首に腕を回してぎゅうと抱きつきながら、「だいすき」と涙混じりに伝えられて、情けなく視界が歪んだことは絶対、死ぬまで誰にも言わない。
もう、駐車場を走り回るような子どもじゃない。
――でも、完璧な大人でも、無いから。
俺らに上手な「さよなら」は、まだ早いらしい。
だからその分、寂しさで浮き彫りになる、まだまだぎこちない想いを、分け合うしかない。
× time to say goodbye
○ time to say love
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