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【悲報】閉じ込められました。
"いやぁ〜!びっくりしましたね!今週土曜、丁度そのエレベーター点検の予定だったんですが、まさか今止まっちゃうとは!惜しかったですね!"
………惜しかった、とは?
めげずにあらゆるボタンを全て押し終えても、うんともすんとも言わないエレベーターに私は絶望し、その隣に設置されている非常ボタンを強く長く押した。すぐに繋がって「どうしましたか」と人の声が聞こえたことに一先ず安心はしたけど。
"止まり方とか聞いてるとそんな厄介な故障じゃ無さそうですね!恐らく30分くらいで駆けつけますんで、そしたらすぐに開けますから!待っててくださいね!"
「…はあ、よろしくお願いします」
設置されてるスピーカー越しに明るく到着予定時刻を告げた恐らく管理業者の男性は、どうやらエレベーター内の私のテンションの低さは全く察していないらしい。
そのまま通話が切れて、再び1人ポツンと、この狭苦しい空間に取り残された私の状況はあまりに悲しい。
幸い電気も点いているし、怖いとかでは無いけど。
『お前、3階くらいでエレベーター待つなよ、階段使え』
さっき会話を交わしたばかりの男の発言を思い出すと
この不幸に軽く苛つける。ババアだと鼻で笑った奴に対抗せず、大人しく階段を使えば良かったと後悔するのも、もはや悔しさがある。
再び空間の隅っこに戻った私はその場に体育座りをした。変わらず手に持ち続けてしまっていた単語帳は、この1年間で、相当使い古してきている。
覚えられない単語のところに貼りつけた付箋に触れつつ、深い息を静かに吐き出した。
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