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意地っ張り女の、社畜デビュー
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「え、かかか彼氏いるの!?!」
「……そんな驚きますか?」
「驚くよ!!だって景衣ちゃんの来週からの社畜シフト見てみ?!彼氏いる子の働き方じゃ無いけど!?」
「…休みの希望、入れなかったからですね」
大学から2駅くらいの大きなターミナル駅近くにあるチェーンのカフェで大学受験を終えてからバイトを始めて、はや数ヶ月。
最初はレジ打ちや洗浄作業をしながら、オーダー用語やメニューなど基本的なマニュアルを頭に叩き込むことで精一杯だったが漸く、少しずつ戦力として数えてもらえるようになってきた。
シフト表を確認して驚きの声をあげているのは、バイトを始めた時からとてもお世話になっている菊さんだ。
同じ大学に通う2年生の彼女には、大学に入ってからは特に、バイトのことだけではなくて、時間割の組み方や、「楽単」の情報など、ありがたい教えを沢山恵んでいただいている。そして今日、入学して1ヶ月が経過し、ゴールデンウィークを含む5月1週目のシフトが店長から共有された。
確かに、綺麗なまでにほぼ毎日「新戸部」の名前が入っている。
「なんで入れなかったの!!まんまと店長にいっぱいシフト入れられてるじゃん!!ゴールデンウィークだよ、彼氏と遊びに行かないの?」
お客さんが切れたタイミングで、コーヒー豆やギフト商品など店頭販売のコーナを整えていると、手が空いた菊さんがカウンターから身を乗り出してこちらに問いかけていて、思わず苦笑いが漏れる。
グレージュの髪色で、レイヤーの入ったショートボブの彼女は第一印象は「大人のお姉さん」だったのに、話してみると割と発言に子どもらしさもあったりして、とても可愛らしい。
「向こう、部活が忙しいので。ゴールデンウィークも合宿なんです」
「……部活をやっている子なのね!?え、同じ大学!?」
「違います」
「どこ」
「…◻︎大です」
「おい、ベリー頭良いじゃん。…というか待って、じゃあ遠距離してるの!?いつから付き合ってたの、なんでお姉さんに何も言わないの」
「…ラウンド行ってきます」
「あ、逃げた」
仕事の合間にお客さんの使うテーブルを拭いたり、返却コーナーの食器を片付けたりするラウンドの仕事は、菊さんの尋問から逃れるのにはとても最適だ。
黙々と仕事をこなしながら、以前、奴が夜に電話してきた時のことを思い出す。
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