意地っ張り女の、"ただの"突撃おうち訪問

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 意地っ張り女の、"ただの"突撃おうち訪問

◻︎ 「――あれ、景衣じゃん」 「、莉々(りり)ちゃん」 マンションに辿り着いて、エントランスを駆け抜けようとすると、ポストと宅配ボックスが設置されている左側から声をかけられた。勢いになんとか急ブレーキをかけて止まると、DMをいくつか抱えた彼女が目を丸くして近づいてくる。 「そんな急いでどしたの」 「……な、なんでもないよ」 「嘘つけ」 「いだだだだ」 容赦なく頬を抓る彼女は、睨みをきかせまくる。昔なかなかのヤンキーだったらしい莉々ちゃんがガンを飛ばすと、普段の愛らしい見た目から考えられないほどの迫力がある。ぐ、と近づいて不審な私の様子を観察してくる彼女の綺麗な二重の瞳は、あいつともやはりよく似ている。 「景衣、ひー君と付き合ってんでしょ」 「……エ?なんでそう思うの」 「勘」 花江 莉々の前世は、野生動物か何かなのだろうか。 絶句する私に勝ち誇ったような顔で口角をにやりと上げた彼女は、漸く私の頬から手を離した。 「うちのお母さん達も怪しいってずっと言ってるからね?あんたら、なんで隠せると思ってんの、アホなの」 「……いや、態々報告するのも気まずくて。あと怖い」 うちの母にも、一芭のお母さんである由紀子ちゃんにも奴とのことは伝えていない。だってバレたらどんな尋問の時間が待っているか分からない。 「まあ、そりゃ面白いもんな。で、あんたは休日のこんな朝早くから何してんの」 「…今から一芭の所、行こうと思って」 「………まじ?」 「ま、まじ…」 目を見開いた彼女は、パジャマ姿でどうやら寝起きらしい。化粧も施していない無防備な姿なのに、整った顔立ちと綺麗な肌が羨ましい。 今しがたバイト先で決めた今日の予定を伝え終えた数秒後、莉々ちゃんは吹き出して突然笑い声を上げた。 「……あの、莉々さん」 「…あははっ、面白すぎる…っ!」 「ベタだなと思うけど、もう決めたから。一芭には言わないで」 「ふーん、我慢できず、会いに行くんだ?」 「そうだよ!!!」 揶揄うように尋ねてくる莉々ちゃんにもはやヤケになって返事をすると、また笑われた。何この羞恥タイム。でも時間をロスしている場合では無い。準備があるからと振り切って進もうとすると、首根っこを容赦なく掴まれて「ぐえ」と苦しい声が漏れた。
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