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私と、この男は何の変哲も無いこのマンションでずっと一緒に育ってきた。理由は、母親同士が定期的に開催される住人の交流会で仲良くなったからという、至極ありきたりなものだ。
“花江 一芭“
その名前を最初に聞いた時は、あまりに繊細な綺麗な響きから、女の子だと思った。
でも初対面の時。その可愛いらしい名前も違和感なく似合ってしまうような中性的で整った顔をしてるくせに、二重の瞳をやけに細めて睨んできたのは紛れもない、男の子だった。
それがこいつの照れ隠しだと気づいたのがいつだったかは、もう分からないけど。
『…あー、じゃあさ、』
――昔、1つだけ交わした約束を
この男は覚えていたりするのだろうか。
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