彼女はいつも一位

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彼女はいつも一位

 彼女はいつでも一位だ。僕が知る限り、一位じゃなかったことなど一度もない。  小学校の時のかけっこでも真っ先にゴールテープを切ったし、中学の時の期末テストでも一番上に名前が載った。横で彼女を見ていた僕が何位でゴールしても、テスト結果に名前が載らなくても。地球の予定表に書かれているかのように、それはいつも決定事項だった。  そして、入学式のこの日。 「若い草の芽も伸び、桜の花も咲き始める、春爛漫の今日、私たち、新入生一同は――」  真新しいノリの効いた紺色のブレザーに赤いチェックのスカートの制服姿の彼女が檀上(だんじょう)にいる。長い黒髪の彼女は、よく通る透明感のある声で新入生代表のあいさつをしていた。  つまり、高校入試で主席だったということだ。 「あのクールビューティ、同じクラスだよな」 「知らないのか。彼女、才色兼備(さいしょくけんび)でかなりの有名人だぞ。中学から始めたソフトテニスで全国大会にまでいったんだってよ。全国模試でも毎回上位に名前があるってさ」 「へぇ。いるもんだな。文武両道の才女って」  近くに座っている男子がひそひそと話しをする。それが終わらないうちに、壇上の彼女が言葉を区切った。 「新入生代表、1年3組、鶴ノ原マイ」  学校が同じだったことも驚きだけど、なにも同じクラスじゃなくてもいいのに。 平々凡々な男子高校生、秋野陣とスーパー女子高生、鶴ノ原マイは幼馴染だ。  しかし中一のとき以来、一言も口をきいていない。
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