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プロローグ
「もう、いい加減にしてよ!」
美香は突然席を立つと、捨て台詞を吐いて店を飛び出した。
店内の注目が一気に優斗に集まる。
自分が悪者みたいで肩身が狭い。
そそくさと勘定を済ませると、店を出た。
「また、やっちゃったな…。」
優斗は公園のベンチでため息をつく。
どんよりとした空は今にも泣きだしそうだ。
また、ふられた。
これで何度目だろう。
優斗はどちらかというと、女性にもてる方だ。
身長は180㎝ぐらいあるし、見た目も悪くない。
高校時代から女子に告白されることが多かった。
むろん、悪い気はしない。
だから、告白されて付き合うことが多かった。
よほど、タイプじゃない場合を除いては。
問題はその後だ。
長続きしない。
早い場合は、1か月ぐらい。
長くても半年。
相手に愛想をつかされる。
大体、ふられる理由は同じだ。
優斗の優柔不断なところ。
さっきも、メニューをなかなか決められないでいた。
もちろん、それ自体は小さなことだ。
だけど、これが積み重なると限界を超えるらしい。
名は体を表すというが、優斗の場合まさにその通り。
名付けた親をうらんだことも数えきれない。
美香にフォローのメールを入れるべきか、それとも、潔くあきらめるべきか悩む。
その時だった。
優斗は地面が大きく波打つのを感じた。
地震だ!
それもかなり大きい。
こんな時、咄嗟に何をすればいいのか分からない。
優斗は何もできずにベンチにしがみついていた。
揺れが激しくて眩暈を感じるので目を閉じた。
しばらくすると、揺れは収まった。
優斗はそおっと目を開ける。
「すごい揺れだったね~。」
突然、話しかけられて、優斗は振り向く。
そこには、見たこともない女性が立っていた。
すらりとしたロングヘア―の美女。
目鼻立ちがくっきりとしている。
ハーフだろうか。
いつの間に、隣にいたのだろうか…。
「いや~、本当ですね。」
とりあえず、無難に相槌を打つ。
こんな災害のときは、周りにいる人と協力しないと。
しかし、次の女性の言葉は優斗の想像を遥かに超えていた。
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