プロローグ

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「また、ふられちゃったね…。」 優斗は思わず耳を疑った。 なぜ、自分が今しがた、彼女にふられたことを知っているのだろうか? 「え?なんで、それを?」 あれこれ考えても仕方ないので、率直に尋ねてみる。 「だって、ずっと見てたし。」 女性は悪びれる風もなく、即答した。 そうか、あの店内にいたんだ。 それで僕らを観察していたんだ。 でも、確かに『また、ふられちゃったね。』と女性は言った。 今だって『ずっと見てた』とも言った。 なんで、俺の過去まで知っているんだ。 「ずっとって、あなたは一体…?」 「勘違いしないで!ストーカーとかじゃないよ。むしろ、逆。」 「ストーカーの逆って?」 「あたしはあなたの守護精」 「守護精?」 女性はだまって、優斗の手首を指した。 優斗の手首にはブレスレットがはめられていた。 誕生日に美香がくれたものだ。 優斗はブレスレットと女性を代わる代わる見比べた。 「あたしの名はラピス。ラピスラズリの精なの。」 「ラピスラリズ…!?」 「ラピスラズリ!せっかく、彼女からもらったプレゼントなのに!名前ぐらい覚えなよ。」 優斗は、まだ、目の前で起こっていることを消化できていなかった。 手の甲をつねってみるが、普通に痛い。 どうやら、夢ではないようだ。 夢でないとすると、この女性が言っているのは本当なのか。 この女性に言わせると、彼女はパワーストーンの妖精みたいなものらしい。 それなら、さっきの二人のやり取りを見ていたのも納得だ。 きっと、過去のことも分かってしまうのだろう。 「ラピス、守護精というのは、こうやって、いつも、姿を見せるものなのか?」 「ううん。滅多にないわ。あたしも驚いている。」 「え?じゃ、なんで、俺の前に?」 「それは、あたしにもわからない。でも、さっきの大地震がきっかけかもしれない。」 確かに、大地震の後、ラピスは登場した。 そうだとすると、パワーストーンを身に付けていた人全員の前に、今、妖精が現れていることになる。 優斗はあわてて、周りを見渡してみた。 しかし、人々は先ほどの地震の余震をただ警戒しているだけで、妖精の登場に驚ているようには見えない。 「守護精にもランクがあるの。あたしはプライマリーといって、最高ランクの妖精。だから、こうやって、人の前に姿を見せることができたのだと思う。」 「プライマリー!?だけど、パワーストーンなんて、いたるところにあるだろう。それこそ、石の数と同じぐらい。」 「うん、でも、本当に効果があるのは一握り。AAAランク以上で、しかも、きちんと浄化されたものでないと、守護精は宿らない。」 気が付くと、周囲の視線を感じる。 人々が怪訝な表情で優斗を見ている。 「ちなみに、あたしは、優斗にしか見えないよ。」 「そうなのか!」 つまり、さっきから、大げさなリアクションで独り言を話す変な人になっていたわけだ。 ここにいては、いつ、変質者呼ばわりされるか分からない。 ひとまず、自宅に帰ろう。 優斗は完全に状況を理解したわけではないが、帰途に着いた。
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