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「タバちゃん、こんなところで、なにしてるの? あぶないよ」
「タバちゃの家は、この近くなのでつ」
「そうなんだ。見ての通り、お兄ちゃん、今、手が離せないんだ。タバちゃん、一人で帰れるかな……?」
「タバちゃはひとりじゃなかったでし」
「一人じゃなかった……」
以前にも聞いたことがあるような台詞だ。ウルフ刑事はぶるるッと頭を振った。なぜならあの時、タバちゃんと一緒にいたのは……。
「おとしものでし」と、タバちゃんは封筒を差し出した。ウルフ刑事は、とっさに胸の内ポケットのあたりを見た。いつも持ち歩いている退職届を落としたのかと思ったのだが、身動きすれば、ちゃんとカサっと紙の音が答えた。
ホッとして、差し出された封筒をよく見てみると、封筒は銀行のATMの横に設置されているものだった。
「この封筒、どうしたの?」
「さっき、この人が飛び降りた時に、ズボンのポケットから落としたでつよ」と犯人を指さす。
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