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「おい、この封筒、お前のか?」とヒロ先輩がタバちゃんの手から封筒を抜き取り、容疑者に聞いた。
指紋をつけないように、上の角を指先でつまんでいるので、封筒がブラブラ揺れている。容疑者がそっぽを向いて無視していると、ヒロ刑事は封筒の口をあけて覗き見た。
「お、金だ! けっこう入ってるぞ」
「返せ!」ととたんに容疑者がウルフ刑事の腕の中でもがいて、封筒に手を伸ばした。
ヒロ刑事は犯人の手の届かない場所にまで後じさりして、これ見よがしに封筒を覗き込むと、ヒュウッと口笛を吹いた。
「いくらぐらい入っているんですか?」とウルフ刑事も首を伸ばして覗こうとする。
「ダメ。見せない」
「えっ! なんでですか? 僕も見たいですよ!」というウルフ刑事の抗議を無視して、ヒロ刑事は容疑者の男にもう一度聞いた。
「これ、お前の金か?」
「そうだよ。当たり前だろ!」
「ほー。それじゃあ、この封筒からひったくりに合った被害者の指紋が出たら、おかしいよなぁ?」とヒロ先輩は容疑者の手が届きそうで届かない絶妙な位置で、封筒を突きつけた。
「おい、ウルフ、被害者はどこの銀行で生活費を引き出したんだった?」
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