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「はい! ヨツビシ銀行です」 「ほー。ヨツビシ銀行かあ。おやあ? この封筒もヨツビシ銀行の封筒だなあ。これはなんという偶然なのだろうか!」 「……うう……」と容疑者は悔しそうに唇を噛みしめていたが、急にガクッと首をうなだれた。と、同時に体から力が抜け、ウルフ刑事の腕にズシッと体重が乗った。 「おっとと!」  ウルフ刑事は慌てて男を支えようとしたが、支えきれず、男と一緒に倒れ込んでしまった。  しかし男は、若干、目がとろんとしているものの、意識を失ったわけではなかった。がっくりと脱力し、先ほどまでの反抗的な態度も消え去っていた。 「急にどうしたんだ? まっ、でもこれなら救急車を呼ばなくてもよさそうだな。ウルフ、ホシさんを車に乗せて署にご同行願おう」 「は、ハイ!」  ウルフ刑事は男の腕を引っ張って、立ち上がらせた。 「あ、タバちゃんを家に送ってあげないと」と、ウルフ刑事は慌ててあたりを見回した。  タバちゃんは、通りの先の曲がり角にさしかかったところだった。白いふんわりとしたスカートを履いた女の人と手を繋いでいる。 「タバちゃん!」  ウルフ刑事が呼ぶと、タバちゃんは振り返って手を振った。  タバちゃんと手を繋いでいる女の人は、軽く腰を折って会釈した。ウェーブのかかった髪がはらりと彼女の横顔にかかる。耳元でキラッと光ったのは、真珠のイヤリングだろうか。 「まっ、大人と一緒なら大丈夫だろ」と言うと、ヒロ刑事は容疑者の男を車に押し込んだ。
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