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  軽自動車の助手席で、ヒロ刑事はサーターアンダギーにかぶりついた。  ゲンコツのように丸くてゴツゴツした、ドーナツに似た揚げ菓子は、思いのほか崩れやすかったようで、カケラが膝にバラバラとこぼれ落ちた。 「もー、ヒロ先輩、こぼさないでくださいよ。レンタカーなんですから」  背の高い後輩刑事が、窮屈そうに体を横にひねって、シートに散らばったカケラを拾い集める。 「お、ウルフ、悪いな」  ヒロ刑事は悪びれもせず軽く謝ると、手に持ったかじりかけのサーターアンダギーを、上を向いて口に放り込んだ。「ウホッ! ムホッ!」と、今度は喉に詰まらせてむせてしまった。 「大丈夫ですか、ヒロ先輩」と、ウルフ刑事が、慌ててブリックパックの牛乳を手渡した。  ヒロ刑事はパックを握りつぶす様にして、ストローから牛乳を吸い上げると、ふう、と息をついた。 「やっぱり普通のドーナツにしたほうがよかったかな」 「コンビニで沖縄フェアがやっていましたからね。仕方ないですよ」とウルフ刑事は海塩味の「ちんすこう」をシークヮーサージュースで流し込んだ。
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