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「なあ、この、シーサーのとなりの四角いものはなんだ?」とヒロ刑事がタバちゃんに聞いた。
「お財布でし」
「おばちゃんが、お財布を盗られて、泣いちゃうところでし」
よく見ると、シーサーの目から涙がこぼれている。
「えっ! この絵が塀に描かれたのはいつなんですか? もしかして犯人の犯行予告では……?!」
犯人の犯行予告の方が、心霊現象よりもずっと信憑性がある。それに怖がりなウルフ刑事にとっては、幽霊よりも人間の仕業だという方が、気持ちが落ち着く。
「それが、犯人が捕まる前々日のことだったんです」
「このあたりでも、ひったくり被害にあう人が多いと噂になっていて、比嘉さんがお財布を盗られて泣いちゃう、なんて、リアルでなんだか気持ち悪いなあ、と思って、それで比嘉さんにご相談したんです」
「私は主人にすぐにこのことを話しました。すると主人は、犯人と思われる人物は、塀に絵が描かれた時には、すでに張り込みして常に見張っているので、いたずらなんかしたら、すぐに捕まえていたはずだ、と」
「つまり、塀の絵は犯人による犯行予告じゃなかった……」
「それで心霊現象なんじゃないか、という話になったんです」
「つまり、絵を描いた幽霊か何かは、次に起こる犯罪を予言した、ということですか……」
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