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「じゃあ、一緒にいてくれたお姉ちゃんって誰かな?」 「家まで送ってくれた女の人は、アンおねえちゃんでし」  タバちゃんはスケッチブックをめくって、遊園地のお化け屋敷で描いたアンの絵を指さした。  アンというのは、遊園地のお化け屋敷に棲んでいる幽霊だ。以前の事件で、タバちゃんがお化け屋敷で迷子になった時に、出口に連れて行ってくれた、いわば顔見知りの幽霊だと言えるかもしれない。 「やはりタバちゃんを送って行ってくれたあのたおやかな人は、悪霊じゃなかったな」とヒロ刑事が自信ありげに言った。「美人に悪霊なしだ」 「じゃあやっぱり……あの人は幽霊だったのか……」 「だな。事件を解決したのに、幽霊が出てこないなんておかしいと思っていたんだよ」 「もう、ヒロ先輩っ! 出ない方が普通ですから!」 「普通……。あ、そうか! わかったぞ。幽霊が出るのは一人だけ、無意識にそう思い込んでいたから、謎が解けなかったんだよ」 「幽霊はアンの他にもいたっていうことですか? アンと塀に絵を描いた幽霊は別人だったということですね?」 「そうだ。捕まった犯人は、『残念だ』と言っていただろ? しかし犯人は、残念だ、と自分が言った事を覚えていなかった。なぜならその時、幽霊に憑りつかれていたからなんだよ」 「なるほど! 冴えてますね、ヒロ先輩」 「()りついていたのは、普通に考えたら、亡くなった被害者だろうな。犯人のせいで命をおとしたんだから。それで死にきれなくて、犯人を呪って出て来たわけだ」
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