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「わかります。亡くなった被害者の方は突然の死で、無念だったでしょうからね。当然ですよ」と、ウルフ刑事は瞳をうるませた。 「被害者は犯人が憎いし、これ以上被害者を増やしたくはない。この場合の被害者というのは、次のターゲットになるはずだった、シーサー夫人……、いや、比嘉課長夫人だ」 「でもなぜ、タバちゃんの家の塀に警告を描いたんですか? 直接、課長の家に警告すればいいのに」とウルフ刑事は言いかけて、口をつぐんだ。  犯人を恨む幽霊を悪い存在だと言ってしまうのはかわいそうだが、やはり、怨霊のたぐいと言えなくもない。  それに対して、比嘉課長夫妻は、大きな声では言えないが、ニカッと笑った顔がシーサーによく似ている。シーサーといえば、沖縄では悪いことから守ってくれる守り神。守り神が一対揃った家に、心霊現象を起こしたくても起こせなかった……のかもしれない、とウルフ刑事は推理した。  ウルフ刑事が納得した顔で、ヒロ刑事に「分かりました」とうなずいてみせると、ヒロ刑事も(そうだろ?)という顔でうなずき返した。
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