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「だから、幽霊の友達がいるタバちゃの家の塀に絵を描いたんだよ。分かってくれそうだし、実際に警告は通じたしな」
「なるほどー! そうかもしれませんね」
「『残念だ』と言ったのは、犯人は雨どいから飛び降りたものの、思いのほか怪我が軽かったことだな、多分。
幽霊の気持ちを考えたら、本当は憑り殺したいくらい恨んでいたんだろうからな。警察につかまっちまったら、ちょっとくらい憑りついても、少し具合が悪くなったら、あっという間に救護室で治療されちゃうしな。
幽霊にしてみたら、憑り殺すっていうのも一苦労なんだろうなあ」
「でも……、それでも犯人が捕まったことで、被害者が犯人を恨む気持ちが、少しは収まっていたらいいですよね」
「そうだなあ」とヒロ刑事も答えた。
「そうよね。おかげさまで、私は無事だったんだから」と、比嘉夫人もうなずいた。そしてスケッチブックに描かれたシーサーによく似た笑顔で、ニカッと笑って言った。「うん、きっと成仏しているわよ!」
シーサー夫人がそう断言すると、もしもまだ幽霊が成仏していなかったとしても、慌てて成仏してしまいそうな説得力がある。
ウルフ刑事は、塀に警告の絵を描いてくれた幽霊に「ありがとう」と誰にも聞こえない位の小さな声でつぶやいた。おかげでシーサー夫人の明るい笑顔を守ることができたのだから。
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