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「そんなもんか? それにしても、この犯人が狙うのは女性ばかり……。ふん、卑劣だな。  前回の被害者は、ATMで一か月分の生活費を下したばかりだったから、まとまったお金も入っただろうし、すぐに次の犯行に及ぶとは考えられないしな。この張り込みは長くなりそうだなあ」 「そうですね。しかし、六時ともなると、日が長い季節だとは言っても、さすがに少し暗くなってきましたね」 「そうだなあ……。お、ウルフの顔が夕焼けに染まってるぞ」 「そうですか? あ、ヒロ先輩もですよ」  まだ日がある時間帯には犯人が動く訳がない、とタカをくくっている二人には、緊張感の欠片もなかった。夕焼けに染まったお互いの顔を指さし合って、アハハと笑い合う姿は、偽装するまでもなくドライブ中のおやつタイムのようななごやかさだ。  しかし呑気な二人が見張っている犯人は、実はかなり悪質なひったくり常習犯だった。
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