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 手提げのバッグを引ったくられた被害者女性が、反射的にバッグにしがみつくのはよくあることだ。そうした時、この犯人はバッグごと女性を引きずったままバイクを走らせ、振り落としてバッグを奪っていく。ある時などはバッグにしがみついていた女性を足で蹴飛ばしたらしい。 「課長の家は、犯行現場があった場所を結んだ、円の中にあるらしいですよ」 「あー、なるほどなあ。課長は愛妻家らしいぞ。しかもかかあ天下。だからあんなに早く捕まえろーっていうんだな」 「えっ! 課長の奥さん、鬼嫁なんですか?」 「鬼嫁とかかあ天下は違うんだって課長は言っていたぞ。この前の飲み会でも、『俺は愛されている! ただ、頭が上がらなくて逆らえなくて尻に敷かれてるだけなんだ』ってでかい声で叫んでいたし」 「だけ……? ま、まあ、課長の家の事情はわかりましたけど、ひったくりは生活安全課の管轄ですよね? なんで捜査一課の僕たちまで……?」 「そうだ、ウルフには言うの忘れていたな。実は四番目の被害者が鞄を引ったくられて、倒れた拍子に後頭部を打ちつけて、一週間前に亡くなったんだよ」 「ええっ! そうだったんですか? だから捜査一課の僕たちも、急に捜査に投入されたんですね」  ウルフ刑事とヒロ刑事の所属する捜査一課は、凶悪犯や殺人犯を扱う、ドラマなどでは花形の部署だ。
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